緑茶は生葉を新鮮なうちに熱を加えて酸化酵素の働きを止めて作ります。加熱法は「蒸す」のが主流ですが、もう一つ、釜で熱する「釜炒(い)り」があります。実はこれ、日本に茶栽培が伝来した頃の製法です。大航海時代に東洋から欧州に渡ったのも釜炒り茶で、世界中で飲まれています。
日本で釜炒り茶を生産しているのは佐賀県の温泉地・嬉野市など九州のごく一部。嬉野でも生産量の1割程度とあって「幻の銘茶」とも呼ばれています。
江戸中期から300年近くこの製法を伝えている同市の三根製茶は、独自に開発したものも含めて釜炒り茶の製造・販売に力を入れています。すっきりしていると好評で旅の思い出に購入する観光客も多いそうです。高温で処理するため賞味期限が長く、水色(すいしょく)は黄金色。香ばしいのが特徴です。蒸し製茶は、アミノ酸の甘味・うま味を引き出すため湯冷ましに取りますが、カテキンの爽快感を味わう釜炒り茶は熱湯を注いでもおいしくいただけます。
常務の三根与志寿さんは「お茶の未来は消費者が決めていくもの。時代のニーズに合ったお茶を作り、茶農家にも還元していきたい」と語ります。ネット販売に加え、2年前には東京・巣鴨にも出店。大航海時代の味を楽しむ人が増えています。
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【プロフィル】藤井敬子
ふじい・けいこ テレビ長崎、TVQ九州放送出身。大使館や企業などでセミナー講師を務める。ティーインストラクター。
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