外食・小売り各社が深刻化する人手不足の対策を急いでいる。パートやアルバイトの正社員への登用や待遇改善などでベテランの引き留めを図るほか、一部店舗を休業、閉鎖して人手を確保するチェーンも出てきた。長引いたデフレ環境の下で低コストの労働力を活用し経営規模を拡大してきた企業は成長モデルの転換を迫られている。
「少子高齢化で人材が枯渇する。優秀な人材がパートやアルバイトで働く時代は終わった」
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は11日の会見で、傘下の衣料品大手ユニクロのパートとアルバイト約1万6000人を地域限定正社員に登用する狙いを、こう説明した。業務が過酷な“ブラック企業”だとする批判も「一つの契機にはなったかもしれない」と打ち明け、「登用後は賞与や有給休暇などもあり、年収は約2割増える」と待遇改善を強調した。
決断の背景には、生産年齢人口が減少するという中長期的な見通しに加え、景気回復で始まったパートやアルバイトの奪い合いがある。国内の完全失業率は直近の2月で3.6%と「完全雇用に極めて近い」(日銀の黒田東彦総裁)水準。求人情報大手のリクルートジョブズによると、首都圏など3大都市圏の3月の求人件数は前年同月に比べ約5割増えた。平均時給も0.6%増の948円と9カ月連続で右肩上がりの上昇が続く。