F1レーサー、アイルトン・セナの走行を音と光で再現した「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」で文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門大賞を受賞した電通のクリエーティブ・テクノロジスト、菅野薫さんが電子書籍「クリエーティブ・テクノロジスト」(KADOKAWA、希望小売価格税別300円)を出版した。急速なデジタル技術の進化で生じたクライアントの要望と広告会社の“すき間”を埋めるクリエーティブ・テクノロジストという肩書の理由や、斬新なプロジェクトを次々と発表してきたそのスキルを解説している。
広告らしくない広告
菅野さんは2002年に電通入社。マーケティング領域のデータ解析や分析システム開発などを経て、プログラミングをはじめとする独学で得た知識も生かし、4年ほど前から制作も手掛けるようになった。
本田技研工業(ホンダ)のカーナビゲーションシステム「インターナビ」で得たリアルタイムの走行データを東日本大震災直後の移動支援に生かした「通行実績情報マップ」。その走行データをビジュアライズした「CONNECTING LIFELINES(コネクティング ライフラインズ、略称CLL)」を手がけて一気に知られる存在となった。
ホンダは被災20時間後にデータを無償で配布。通行実績があった道路情報の共有が復興を支えた。徐々に道がつながっていく様子やソーシャルネットワーク(SNS)上に投稿された通行に関するツイートなどを誰でもわかる形で地図上に描画していったCLLは、世界中で20を超える広告・デザイン賞を受賞した。