■海外向け資料翻訳 事業モデル差別化
現在の日本の株式市場は、外国人投資家によって支えられている。このため上場企業にとって、海外投資家に向けたIR活動が一段と重みを増している。一連の活動を進めるに当たっては、アニュアルリポートの出来不出来が大きく左右する。エイアンドピープルの主力業務は同リポートをはじめとした海外向け資料の翻訳で、さまざまな業界の有力企業から受注実績を着実に積み上げている。
◆大学で学び直す
浅井満知子社長の振り出しの職業は歯科技工士。手先が器用なためコツコツと何かを作る職業に憧れ、「子供が生まれても仕事を続けることができる」という理由で進路を決めた。
しかし、技工士の世界はでっち奉公。朝7時から働き始め帰宅に利用する電車は、午前0時46分発の終電だった。それが月曜から土曜日まで続いた。「このままで一生終わってよいのか」。そんな疑問がわき、26歳のときIT系の企業に転職した。
総務のつもりで入社したら配属先は営業。パソコン関連のユーザーサポートなどが主な仕事だった。聞かれたことは「折り返し電話致します」といった形で対応。SE(システムエンジニア)に聞いて回答するといった作業を繰り返し、知識を体系化し信頼感を高めていった。
ただ、ITは進歩が早い。体得した情報がどんどん古くなり「年を取ったときに続けていけるのか」といった不安を抱えるようになる。そこで友人からの誘いに乗る形で翻訳会社に応募、転職に踏み切った。
入社後半年で営業部門のトップとなるなど、滑り出しは順調だった。その一方で「過去の人的ネットワークに助けられただけ」との思いが募るようになり、「大学を受験し直して、ビジネスの知識を習得しよう」との意思を固め青山学院大に進学した。
勉強の楽しさは、予想をはるかに上回っていた。一流企業に勤めながら経営学を学ぶ仲間も多く刺激を受けた。3年生からは起業を意識するようになり、卒業後に翻訳サービスの会社を立ち上げた。