味の素が、フランスの人工甘味料工場の売却に向けて検討に入ったことが9日、分かった。甘味料の生産は、国内の東海工場(三重県四日市市)に集約する。汎用(はんよう)的な人工甘味料は、中国メーカーなどの価格攻勢が激しく、採算が悪化。同社は高付加価値製品の強化を図るため、仏工場の売却方針を決めた。
同社は、東海工場と1993年に稼働した仏の味の素ユーロ・アスパルテーム(グラブリン市)の2カ所でアミノ酸由来の甘味料を生産してきた。両工場で年間1万トン規模の生産能力を持つ。だが、欧米の炭酸飲料市場の低迷に加え、中国メーカーの大量生産によって、汎用品の国際的な価格が落ち込んでいる。
このため、汎用品生産比率が高い仏工場での生産をやめ、東海工場の稼働率を上げると同時に、他の素材と組み合わせる複合甘味料や機能性甘味料の生産を強化する。現状では汎用品と高付加価値製品の売上高はほぼ同規模だが、2020年度をめどに、高付加価値甘味料の比率を7割にまで高める考えだ。味の素は16年度を最終年度とした中期経営計画を今年4月にスタートさせた。この中で同社の強みであるバイオなどの最先端技術を活用して製品の高機能化を図り、中国メーカーなどとの差別化を図る戦略を打ち出している。今回の工場売却は、中期計画具体化の第1弾と位置づけている。