■統治向上 経営監視の職責果たせ
ようやく日本企業にも社外取締役が本格的に導入され始めた。これまで慎重だったキヤノンやトヨタ自動車など、日本を代表する大手企業が相次いで導入に踏み切った。暴力団融資事件に揺れたみずほフィナンシャルグループは6月、社外取締役が取締役会の過半を占める委員会設置会社に移行する。国会で審議中の会社法改正案でも社外取締役を設置しない企業には、その理由を開示することが盛り込まれている。大手企業の取り組みは、政府のこうした動きを先取りしたものだ。
しかし、これで日本企業のコーポレート・ガバナンス(企業統治)が向上するとみるのは早計だろう。それは社外取締役にどのような役割を持たせるかが明確ではないためだ。コンプライアンス(法令順守)の強化が期待されているが、それが社外取締役の本分とはいえない。社外取締役は「外部の目」で経営を監視し、ときに経営者に厳しく注文を付ける立場でなければならない。それが日本企業の収益を高め、ひいては日本経済の成長を促すことにつながることを銘記してほしい。
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民主党政権時代に骨格が固まった会社法改正案では、経団連の反対を受け、上場企業に対する社外取締役の義務付けは見送られた。だが、自民党が政権復帰した後、社外取締役を導入しない企業は、その理由を株主総会で説明することを義務付ける内容に修正された。