独自の農地除染の実証に挑む齊藤登氏(右)とJMCの佐藤雅人氏。桜の季節と入れ替わりに稲作と除染の準備が始まった=4月19日、福島県二本松市の齊藤氏の農園【拡大】
「今や全量全袋検査で福島県産米から放射性セシウムは九分九厘検出されなくなったが、土壌への残留は農業者の外部被曝(ひばく)の不安が残る上、根本的な風評対策にならない」(福島県二本松市で農園を営む齊藤登氏)。齊藤氏をはじめ県内の農業者グループと技術協力会社、JMC(郡山市)の佐藤雅人氏は、中央農業総合研究センター(茨城県つくば市)の横山和成博士の指導を受け、新たな農地除染手法を開発し、自前の実証実験を始めた。
従来の手法は課題が多い。例えば塩化カリウム散布は作物のセシウム吸着を抑制できるが、土地が痩せる。ゼオライト散布は期待したほどのセシウム吸着効果がなかった。ともに大量散布が必要で農家の労働負担が大きい。表層と地下の土を入れ換える反転耕は下層にセシウムが残る。表土剥ぎ取りは長年の土づくりを一からやり直さなければならない上、汚染排土が大量に発生する。
齊藤氏らは新たな除染手法を「有機除染」と命名。「特許申請準備中なので詳細は言えない」(佐藤氏)が従来手法の課題を克服し、肥沃(ひよく)な土壌を残しつつ、セシウムを除去でき可能性がある。すでに、2013年中に県内数カ所で実証実験し、土1キロ当たり2000ベクレルあったセシウムを50~75%除去した。「このデータを持って各省庁や自治体などへ公費実施を提案したが、もっと広い農地での実証が必要と示唆された」(佐藤氏)ため今年度はより多くのデータ収集を検討中だ。
最大の課題は費用。例えば農地10ヘクタール(10万平方メートル)の場合、除染実費、検査費、研究費を含めると7200万円必要になる。このため昨年からクラウドファウンディング各社と検討を重ね、5月下旬、第1号として「READYFOR」で齊藤氏が調達希望人となって100万円を目標に寄付型方式の募集を開始した。今後、反応をみてアピール方法を改善し、運営会社、案件や金額を順次増やす。最終的に県内各地での実証実験に結びつけ、データをまとめ、各省庁・自治体へ提出。新手法による本格的な除染の実現を目指す。