□シークエンス代表 LOGOSインテリジェンスパートナー 三浦健一
■「のめりこみ」へ導く催眠要素
ロジェ・カイヨワの著『遊びと人間』の内容から、パチンコにおける“めまい”と依存との関係について、まとめておきたい。
カイヨワは遊びの領域を4つに分類している。「競争」「模擬」「運(偶然)」「めまい」である。これらはカイヨワのことばを借りれば、競争=個人の優越を示すこと、模擬=虚構の世界で役割を演じること、運=運命の恩恵を追及すること、めまい=わざとひきおこしためまいを官能的に楽しむこと、となる。しかし、このいずれもスロットマシンではごくわずかしか当てはまらないが、パチンコにはとくに「めまい」の要素がほかの要素よりも多いと分析している。
「電気の点滅を見つめつづけねばならぬ業務と、障害物間を魔法のように、いわば願望の視線の重みをかけて、きらめく小さな玉を導こうとする執念からは、催眠状態に近いものが生まれる」。ここから有名な日本のパチンコに対する分析が始まる。これも邦訳(多田道太郎・塚崎幹夫訳)をそのまま引用すると、最初から「めまい」が何よりも楽しみとされている場合があるのがパチンコだ。
また、この場合の「めまい」というのは「立ち止まることの難しさ、機械的行為と絶縁することのむずかしさ」だという。断っておくと、カイヨワがこれを書いた年代と現在とではパチンコも大きく変容しているが、本質の遊びの部分ではあまり変わっていないともいえようか。ともあれ、パチンコの「のめりこみ」のファクトを言い当てている。