大手電力による従来の供給エリア外での「越境販売」が本格化してきた。九州電力が首都圏で小売りを検討していることが30日明らかになったほか、関西電力と中部電力も火力発電を新設し、首都圏での供給を計画する。対する東京電力も10月1日から、関西と中部地方の家電量販店に電力供給を始める。平成28年の電力小売り全面自由化をにらんだ競争の激化が、料金の引き下げなどにつながる可能性もある。
(大柳聡庸)
九電は東京ガス、出光興産と共同で千葉県に最大出力200万キロワット規模の石炭火力発電所を建設する計画だ。3社で共同出資会社を設立し、32年ごろの稼働を目指す。
企業や家庭へ売電するほか、東電への卸売りも検討する。九電が越境販売するのは初めて。
越境販売の主戦場は最大の消費地である首都圏。関電と中部電がすでに子会社を通じ、首都圏の電力小売りに参入。両社とも「首都圏での販売を増やす」(関電幹部)としている。
関電は、宮城県に出力11万2千キロワットの石炭火力発電所を建設し、29年にも発電する方針。また、中部電も東電と共同で茨城県に出力約65万キロワットの石炭火力を建設し、32年度にも発電を開始する。両社とも新たに自前の電源を持つことで電力を安定的に確保し、首都圏での販売拡大につなげる狙いだ。
一方、東電は、今年7月1日までに発電能力の約1割に相当する約650万キロワット分を、他社による営業攻勢で奪われた。このため東電も全国に販売地域を拡大し、巻き返しを狙う。