■社員を成長させ、幸せに働ける場を
7月初旬に全社員を集め、組織運営に関する方針転換を発表した。部署・役職を全廃し、組織を完全にフラット化することにした。これにより、社員は飲み屋で上司の悪口をいうことができなくなった。社長への不満はあるだろうが、全て自分が立ち上がらなければ解決しない。
創業後10年間、一般的な組織運営として階層的に部をつくり、部長がチームをリードするようにやってきた。しかし、仕事の内容はより複雑化し、社員の知恵を結集して取り組まないと差別化が困難な時代になった。たまたまついた上司だけでなく、多くの人との接触によって社員が成長していく機会を広く提供していく必要もある。
一方で組織の完全フラット化は、放っておけば誰も何もやらない経営上のリスクを抱える。「そんなことをして、会社は大丈夫ですか」と心配してくれる外部の人もいた。しかし、協力して乗り越えてくれるはずと、社員を信頼した。
部などグループをつくることで効率的な運営はできるし、リーダーを指名すればその役割に合った成長を期待することができる。しかし本来、リーダーは人に言われて行動するような人間であってはならない。自分がこれはまずいと感じたら自ら手を挙げて問題を提起し、他を巻き込んで問題を解決し会社全体を良くしていくような自律的なエネルギーが必要だ。
フラット組織の例はたくさんある。「ゴアテックス」という防水透湿性素材で有名な米WLゴア&アソシエイツは50年前から社長以外の役職がないフラットな組織を継続し、1万人を超える全世界の組織になっても、それを維持している。先人の知恵を借りて自分たちはどうすればいいかを検討できる。