原子力機構が開発した呼気分析機と実用化に挑むサン・メディックの神崎社長【拡大】
■原子力機構からガス高感装置特許
光触媒技術の応用製品を手掛ける、サン・メディック(千葉市中央区)は、日本原子力研究開発機構(松浦祥次郎理事長)の持つ先端技術「高感度ガス分析装置」(ガス高感装置)の事業化を進めている。原子力機構から通常実施権のライセンスを得たものだが、中小企業への許諾はまだ少ない。アベノミクスの第3の矢である「成長戦略」が待たれる中、国策研究機関の知財活用のあり方としても注目される動きだ。
同社は2003年1月、光触媒関連技術と製品の研究開発、販売会社として設立された資本金1000万円の中小企業。神崎芳比古社長は技術にはまったくの素人で、一からの研究・起業だった。だが、特許庁の特許流通促進事業によって当時の発明協会から派遣された稲谷稔宏特許流通アドバイザー(現・サン・メディック技術顧問)を介して、千葉大学から「酸化チタン分散液及びその製造方法」のライセンスを受けて、可視光型光触媒機能を持つ塗布液剤「メディ・コート」を開発、07年に上市した実績がある。
原子力機構は技術や特許を企業に提供する産学連携活動をしている。同社は13年10月にガス高感装置と関連機器の技術・ノウハウの実施権を受け、呼気分析機「ブレスマス」の生産、販売・リース体制の構築と、一般人でも操作しやすいソフトウエア開発などを進めている。
ブレスマスは「人からわずかな呼気を採取するだけで1分以内に100種類の成分を検知、評価できる」(稲谷技術顧問)システムだ。誰でも肺の中には体内の各臓器から発せられた非常に微量なガス成分が血液と一緒に血管を通って運ばれて集まっており、それらが呼気として排出されている。各臓器の発するガス成分を感知して評価することができれば、各臓器の状態把握や違法薬物の検出に使える。ほかにも、トレーニング中の運動選手の呼気からは身体能力を計測することも応用できる。