【ハザードマップ】仁多産業 海外事業展開失敗で収益悪化 (1/2ページ)

2014.10.30 05:00

 ジーンズの加工や「おろち」ブランドで知られた仁多産業(島根県奥出雲町)は8月1日、松江地裁から破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は約9億8100万円。

 設立当初はクリーニング店の「みつばチェーン」として営業していたが、関連事業としてジーンズを砕石とともにもみ洗いして古着の味わいをもたせる「ストーンウオッシュ」を1988年に始めた。

 さらに、表面に砂などの研磨材を吹き付けるブラスト加工や衣類の形状安定、染色・撥水(はっすい)・レーザー加工などと新規分野を次々と開拓。クリーニング事業からは撤退し、97年には島根県内で2社目の中小企業新事業活動促進法認定企業となった。技術力の高さが評価され、大手の商社やジーンズメーカーなどに取引先を広げ、安定的な収益基盤を築いた。

 取引先のジーンズ縫製加工会社が海外移転を進めたことを受け、同社も2000年に上海、04年にフィリピン、05年に中国浙江省に合弁で工場を設立。ジーンズメーカーの要望に応じ、実業務を中国企業に委託する形で縫製加工も手掛けた。

 自社ブランドのジーンズ「おろち」の販売も始め、繊維の輸入ルートを活用して安価な鋼材の輸入販売にも乗りだした。しかし、事業拡大に伴って設備投資や運転資金が膨らみ、借入金が増大していった。

 ピーク時の05年7月期の売上高は約10億8500万円だったが、近年はファストファッションの浸透で廉価なジーンズが急成長したことで、有力ジーンズメーカーが手掛ける比較的高めのジーンズの需要が落ち込み、同社の売上高も減少傾向に転じた。さらに人件費が高騰した中国や、ジーンズメーカーの現地工場が閉鎖したフィリピンから撤退。ベトナムへの進出も提携先とのトラブルなどで断念するなど、海外事業の失敗で損失を余儀なくされ、資金繰りに追われるようになった。

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