原油安の影響で低インフレが続くとの見方が広がり、12日の国債市場は、長期金利の指標である新発10年債の終値利回りが過去最低を更新し、初めて0・3%台になった。原油安が続くと物価は上昇しにくくなるため、「2%の物価目標に向けて、日銀はさらなる追加緩和に踏み切らざるを得ない」(市場関係者)との思惑から国債を買う動きが強まった。
原油価格の下落はガソリンなどの値下げにつながり、本来は主要国の景気に追い風となる。だが、SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは「急ピッチの原油安で、世界的にデフレ懸念が高まってきた」と分析する。
このため日本では、新たな追加緩和がなされるとの思惑が強まり、「国債はさらに品薄になる」との見方から国債が買われ、金利が低下(価格は上昇)した。この日の新発10年債の終値利回りは前日より0・010%低い0・395%だった。
ユーロ圏でも、欧州中央銀行(ECB)が国債を買って市場に大量のお金を流す量的緩和に踏み切るとの観測から金利が低下した。米国でも「インフレ懸念が後退したため、利上げは先延ばしされる」(第一生命経済研究所の藤代宏一氏)との見方により、金利は低下しつつある。
また、「原油の需要不足も急速な原油安につながった」(証券系アナリスト)との見方が浮上。世界景気の低迷を懸念した投資家がリスクを回避する姿勢を強め、世界的な株高の流れが一服した。この結果、安全資産とされる国債が買われやすくなったとみられる。