安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」の第3の矢である成長戦略の柱の一つとして、ロボットによる産業革命が打ち出されている。産業用のほか介護用、災害対策用など多種多様にわたっている。ロボットベンチャーのユカイ工学は、3月に発売予定のコミュニケーションロボット「BOCCO(ボッコ)」で、一般家庭への普及を図る。青木俊介最高経営責任者(CEO)は「一般家庭へ普及させるため、できるだけ低価格に抑えた」と話している。
--ボッコとはどんなロボットか
「高さ17センチの手のひらに載るほどの小さなサイズで、昔のブリキ製のおもちゃのようなシンプルなデザイン。家族間のコミュニケーションツールとしての役割を果たしている。子供が帰宅すると連動している玄関センサーからの情報を感知して、保護者のスマートフォンに通知を送る。通知を受けた保護者が『おかえりなさい』と音声メッセージを返すと、ボッコが受信する。子供は再生したあと、自分の声を録音して送信することもできる。1人暮らしの高齢者の自宅に置けば、遠くに住む家族ともメッセージをやりとりできる」
--なぜ家族間のコミュニケーションロボットなのか
「フェイスブックのようなソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などのツールは普及してきている。しかしこれらを使うのが難しい子供や、高齢者向けのツールがないことに気がついた。知人からも、自分の子供が帰宅したことが分かるだけでも安心感があるといわれた。また高齢者の見守りへの要望もあった。そこで家族間の意思疎通を豊かにするために開発に着手した」
--どのような機能が搭載されているのか
「IT(情報技術)に強くない人でも簡単に操作できるよう、おなかの部分に再生ボタンと録音ボタンの2つだけを配した構造にした。ドアの開閉を検知する振動センサーのほか、窓の開閉が分かる磁気センサー、照明用の光センサーが付属している。またメッセージを受信、再生、録音するときは、ペットのように首を動かす。2万円台で発売する」
--今後どのような機能を備えていくか
「発売から1年以内に家電も制御できるようにしたい。例えばボッコに『寒い』と言うと、エアコンと連動して適温に調整してくれることなどを考えている。自宅全体をロボットでコントロールするスマートハウスをイメージしている。家電量販店のほか、病院や高齢者施設、ハウスメーカーなどにも導入を働きかける。最重要視するのが一般家庭向けだ。パソコンやゲーム機も家庭へ普及したことで、市場で大きな存在感を発揮するようになった。初年度は2万台の販売を目標にしている」(佐竹一秀)
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【プロフィル】青木俊介
あおき・しゅんすけ 東大工卒。在学中の2001年チームラボを設立し、最高技術責任者(CTO)就任。07年12月ユカイ工学創業。08年ピクシブCTO就任。11年10月ユカイ工学を株式会社に組織変更し、最高経営責任者(CEO)就任。36歳。千葉県出身。
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【会社概要】ユカイ工学
▽本社=東京都新宿区富久町16-11 武蔵屋スカイビル101号
▽設立=2011年10月
▽資本金=630万円
▽従業員=10人
▽事業内容=ロボット、ハードウエアの開発・製造・販売