【本気の仕事講座】(40)商いは楽しく、古風、斬新に (1/2ページ)

2015.1.20 05:00

老舗すき焼き店「ちんや」6代目店主の住吉史彦さん

老舗すき焼き店「ちんや」6代目店主の住吉史彦さん【拡大】

 浅草寺雷門からすぐ近くに1880(明治13)年創業の老舗すき焼き店「ちんや」がある。今回の主人公は6代目店主の住吉史彦氏。

 2001年に36歳でのれんを引き継ぐ。BSE(牛海綿状脳症)問題に端を発した「食の安全・安心」問題、口蹄(こうてい)疫の流行、鳥インフルエンザの流行、リーマン・ショック、東日本大震災があり、これら問題のたびに、大きく売り上げを落とし、店と客の本当の絆とはどういうものか、真剣に考えさせられた。

 自分の仕事は好きだが、最初から好きだったわけではない。仕事そのものを好きな形に変えたり、どうしても好きになれない仕事はやめたりした経緯があった。引き継いだ事業を冷静に吟味して、自分の信念・信条・直感に合う事業であれば、無用に「改革」するのではなく、細部を洗練させるべきだと考えている。一方、新しい科学的知見(食品科学・畜産学など)や社会の動向には注意を払い、事業に採り入れていかねばならない。

 すき焼きは基本的に人を幸せにするもの。最初は接客業特有のストレスを感じた。アルコールも提供するので、酒抜きなら起こらなくて済むトラブルも起きることがある。次の予約客が到着しているのに、先客が泥酔して部屋を空けてくれない場合などは本当につらい。そういう状況は自分も社員にもストレスとなるので、店主3年目の時に2時間30分の時間制限を導入した。

 酔客対策で始めた時間制限は良い副産物も生んだ。1日のすべての仕事が計画的になり、正月の超繁忙期など、以前はいったい何組のお客さまの相手をしないといけないのか、と皆気が遠くなりながら働いていたが、今では1日1部屋が3回転するだけと誰もが分かる。超繁忙期であっても計画的に平静な気持ちで仕事に取り組める効果は大きい。

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