自動車業界の2014年10~12月期決算が出そろった。7社合計の営業利益は1兆3270億円で前年同期から19%の増益を確保した良好な内容だ。だが、課題も山積している。国内需要の不振は長期化し、ロシアの通貨安、中国市場における日本車の競争力低下などだ。これら数多くの問題を覆いかくしたのが円安効果だった。言い換えれば、昨年10月末の日銀の追加金融緩和“黒田バズーカ2”が炸裂(さくれつ)していなければ、自動車業界は収益の踊り場を迎えていたということだ。
大手3社の営業利益増減要因の集計に基づけば、換算効果なども含めた円安メリットは2400億円に達する。3社合計の営業利益は前年同期比で約1800億円の増加だったことから、円安メリットを除けば、実質的には減益決算であったことがうかがわれる。ホンダの500億円に達するエアバッグを中心とする一過性の品質関連費用を足し戻しても、おおむね横ばい。日本車メーカーの収益力は高原状態に転じ始めているようだ。
大きな課題は販売増による増益効果が失速していることだ。3社の増減要因の中で「台数・構成」の要素はほぼゼロ。値上げやインセンティブの圧縮でかろうじて増益効果は確保できているが、販売台数の増加が収益増につながらない構図が顕著となってきた。
過去最高レベルに達してきた米国市場の収益は好調そのものだが、国内と新興国の不調が打ち消す。この構図は来期も続くだけに、今後も各社の収益を楽観することは危険だ。