≪STORY≫
緑茶飲料市場で35%のトップシェアを誇る伊藤園の「お~いお茶」。定番商品としてすっかりおなじみの存在だが、毎年のようにモデルチェンジを行い、味や香りを常に向上させている事実はあまり知られていない。トップブランドの地位は、登場時から積み重ねてきた技術革新が支えている。
「これならいけるだろう。何とか間に合ったな」。昨年12月下旬、伊藤園の中央研究所(静岡県牧之原市)で完成したサンプル品を試飲した原口康弘開発二部第二課課長は、開発メンバーを慰労した。メンバーはみな安堵(あんど)の表情を浮かべた。
それから1カ月後、お~いお茶は桜の花びらをあしらった期間限定パッケージとともに新登場した。中身にもこだわり、香り成分を従来の1.5倍に増やしたほか、味もまろやかさを増した。
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伊藤園が「お~いお茶」の前身である「缶入り煎茶(せんちゃ)」を発売したのは1985年。今年はちょうど30周年にあたる。新商品は記念商品と位置づけられていただけに、開発陣はかつてない重圧を感じていた。
もっとも、開発陣には自信があった。開発に着手した当初からおおよその方向性は見えていたからだ。伊藤園は、地方の農家などと連携し、耕作放棄地や遊休地を茶畑に変える「茶産地育成事業」を2001年から九州4県で展開。そこで摘み取られた茶葉を買い取り、原料に利用してきた。茶産地育成事業には、農業振興や原料の安定調達に加えて、飲料の品質向上につなげる狙いもある。というのも、ここで栽培されているのはお~いお茶の専用茶葉で、飲料用により適しているからだ。栽培面でも産地に社員を頻繁に派遣し、伊藤園の品質要求を満たすよう徹底して技術指導を行っている。