【番頭の時代】第2部 「飛躍」を生み出す(4) クラウドワークス (1/5ページ)

2015.2.27 05:00

 □クラウドワークス・田中優子執行役員

 ■労働市場で「1を100に」

 「五穀豊穣(ほうじょう)」の言葉に倣い、5回鳴らされる東京証券取引所の上場の鐘。普通は社長をはじめ、経営陣が打鐘を行う。しかしこの日、鐘を鳴らしたのは乳児を抱えた女性デザイナーなど一般から招かれた5人。東証関係者も「国内では聞いたことがない」という異例のセレモニーを行ったのは、2014年12月12日、東証マザーズに上場したクラウドワークスだ。

 上場セレモニーはベンチャー起業家にとって一世一代の晴れ舞台。しかし、社長の吉田浩一郎(40)ら幹部はステージの横手に立ち、満面の笑みで拍手を繰り返していた。吉田のそばに控えた経営企画担当の執行役員、田中優子(39)も「これでよかった」と胸をなで下ろした。

 同社はインターネットで業務の受注者を公募する企業と、自分にあった仕事を選んで応募する利用者の仲介の場を運営する。

 仕事を求める利用者なくして自社の成長はありえない。このメッセージを打ち出すため、利用者に打鐘を任せることを提案したのは田中だ。吉田も二つ返事で了承した。

 会社のあるべき将来像を見据え、必要があれば自ら策を打つ。さながら軍師のような役割こそ、昨春、同社にヘッドハントされた田中の務めだ。

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 「日本中の仕事を集め、ここで月20万円稼ぐ人を生み出したい」

 14年11月、宮崎県日南市。市の歴史的建造物を活用した、フリーランス向けの共同作業施設の開所式で、吉田はこんな“失言”をした。20万円という金額は、ネットを通した仕事だけで生活できることを意味する。しかし、だれもが容易に実現できるわけではない。数字が独り歩きすれば、信用問題となる恐れもある。

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