【マネジメント新時代】異なる企業文化まとめる能力必要に

2015.4.4 05:00

スロバキアのエアロモービルが開発中の「空飛ぶ自動車」の試作機

スロバキアのエアロモービルが開発中の「空飛ぶ自動車」の試作機【拡大】

 □エレクトリフィケーションコンサルティング代表・和田憲一郎

 自動車会社は大なり小なり、マトリックス組織を採用している。例えばボディー設計、シャシー設計、エンジン設計などのような機能別の組織と、クルマという商品全体を担当するプロジェクト組織を縦横に組み合わせたものである。しかしながら、近年、電動車両が普及し始め、それに伴ってさらなる進化、例えば自動運転車やワイヤレス給電といったように、自動車単体で収まらない状況が生まれつつある。そのような場合、マネジメントを預かる責任者として、どのような人材が求められるのであろうか。今回はそれについて述べたい。

 ◆「たこつぼ」育ちには困難

 意外に思われるかもしれないが、自動車会社の人たちは、えてしてイノベーションが苦手である。なぜなら、その多くの仕事は、かなりのところルーティンワーク化されており、先代のクルマに対して、フルモデルチェンジ、マイナーモデルチェンジを繰り返すなど、ある程度決まったことをしている。逆に言えば、これまでにない新しいクルマなどを開発する機会は極めて少ない。

 このようなことから、所帯は巨大であるが単一のモノ作りチームということができる。極端な言い方かもしれないが、「冷蔵庫」ならば、いろいろな種類の「冷蔵庫」だけを作っているに等しい。

 しかし、ここにきて環境が変わりつつある。グーグルによる自動運転車の開発、米アップルや英ヴァージングループによる電気自動車参入のニュース、極めつけはスロバキアのエアロモービルが2017年の発売を公表した「空飛ぶ自動車」であろうか。実際に空を飛んでいる姿を見せられると、まるで夢が現実になってきたと思わせる。少なくとも、これまでの自動車会社の発想からは浮かんでこない。

 このように、新たなモビリティーは、自動車会社のみでは解決できず、いろいろな企業と連携したり、これまでの業界とは異なる人たちが入ってくる異業種格闘技になってきた。そうなると、これまで自動車会社の組織で育った人で対応できるであろうか。筆者はかなり厳しいとみる。なぜなら「たこつぼ的」環境で育ってきたからである。

 ではどのような点が異なるのであろうか。ひと言でいえば、従来の自動車産業では枠に収まらない人たちと、協力しながら一緒になってモノ作りができる能力があるかどうかである。

 従来、自動車会社でクルマを担当する責任者は主査、チーフエンジニア、プロジェクトマネジャー(俗称プロマネ)などと呼ばれ、機能別組織とプロジェクト組織を柔軟に使い分けながら、モノ作りを進めてきた。しかし、業界が異なり企業文化まで異なる方々と一緒になってモノ作りを行う必要が出てくると、従来のプロマネといわれる責任者像とは少し違った能力も必要になる。

 ◆人事制度変革伴う人材発掘

 これまで、クルマのプロジェクトの責任者に求められる要素として、筆者は少なくとも次の要素が必要と考えてきた。(1)特定分野について深い知識・経験がある(2)これまでに小さなプロジェクトでもリードしたことがある(3)プロジェクトに対し、自分なりの意見を持ち、情熱を持って対応できる(4)過去にリスクを取り、失敗した経験がある(5)プロジェクトが困難な状況でも、チームを鼓舞しリカバリーできる

 しかし、今後、「モノのインターネット(IoT)」に代表されるように、IT、ビッグデータ、ロボット、画像認識、エネルギー、家・街づくりなど、多彩な要素が絡んでくると、プロジェクトの責任者は上述に加えて、以下のような人材が求められるのではないだろうか。(1)時代に対する自分なりの考えをしっかり持っている人(2)自ら情報を発信する能力のある人(3)企業とコラボレーションを企画するなど、プロデューサー的能力を有する人(4)肩書というより、その人の名前で勝負できる人(5)自分に都合の悪い情報でも、幅広く聞くことのできる人

 課題は、このような素質のある人をどのようにして見つけ、育てていくかであろう。商品の優劣によって、企業の業績が左右されることが多く、新たなプロマネの発掘は各企業にとって喫緊の課題となっている。それは人事制度の変革も伴うのではないだろうか。

                   ◇

【プロフィル】和田憲一郎

 わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャー、EVビジネス本部上級エキスパートなどを歴任。13年3月退社。同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーションコンサルティングを設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。58歳。福井県出身。

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