京都大と武田薬品工業は17日、あらゆる組織細胞に分化して増やすことができる人工多能性幹細胞(iPS細胞)の共同研究を始めると発表した。創薬や再生医療への活用に向け、約10件のプロジェクトを立ち上げる。京大iPS細胞研究所の山中伸弥所長が総指揮を執り、武田は10年間で200億円を投じて産学連携で日本発の技術革新を目指す。
共同研究は心不全や糖尿病、神経疾患、がん免疫治療法などを対象として想定する。患者から採取した細胞をiPS細胞で増やしたり、ほかの細胞に分化したりして新薬の効き目を試す創薬支援などがテーマとなる。また、個々の患者に最も効果のある薬剤を使う個別化医療や、疾患を防ぐ細胞を再生して患者に移植することで回復を目指す再生医療も研究する。
京大と武田の研究員各50人が参加して約100人態勢で、主に武田の湘南研究所(神奈川県藤沢市)で実施。京大の基礎研究を基に、武田の持つ研究設備や薬の成分になる化合物の資産などを使ってiPS細胞の実用化を加速させる方針だ。
山中所長は同日の記者会見で「個別化医療や難病への創薬を行うために連携は心強い」と述べた。武田のクリストフ・ウェバー社長は、「(連携で)創薬のあり方を変えることができる」と語った。