【通信大競争 30年攻防の行方】(1)
NTT社長の鵜浦博夫(66)は今年2月、総務省の幹部をひそかに訪ねた。
「ルールを変えなくてもやれる。新しいサービスの芽を摘まないでほしい」
鵜浦が同幹部にそう切り出したのは、同月からNTTが始めた光回線を利用するブロードバンド(高速大容量)通信サービスの“卸売り”について。業界他社などの反発がある中、過剰な規制をかけぬよう理解を求めたのだ。
他人頼みで普及加速
NTTが「光コラボレーション」と呼ぶ光サービスの卸売りは、NTT東西が販売していた「フレッツ光」の個人向け販売を他の通信事業者や異業種に任せるものだ。企業は設備や課金システムなどがなくても独自サービスに乗り出せる。
NTTにとっては、頭打ちとなっている光サービスの普及を他人頼みで加速できるメリットがある。そして何よりも、他社と同等条件でNTTドコモにも光回線を卸し、同社の固定通信販売に道を開くことが大きな狙いだった。