緑やオレンジ、イエローといったカラーインクを求める万年筆ファンが増え、ブームの兆しを見せている。万年筆で書く楽しさを知ると、次にはまるのが色だ。黒や青が定番だが、いろいろな色を楽しみたいという声に応える格好で、メーカーや文房具店などが色とりどりのインクを売り出している。
パイロットコーポレーションが24色のシリーズを用意すると、セーラー万年筆は「自分だけの色」を作ってくれる工房を開く。個性を表現できるカラーインクの売り上げは急増、2014年は12年比で約2、3倍に膨らんだ。
「この青を作ってほしい」。5日午前、東京駅前の大型書店「丸善」でセーラーが開いた「インク工房」に、若い夫婦が訪れ、女性が写真を見せてこう注文した。
ちょうネクタイをした工房の主、同社文具事業部企画部のインクブレンダー、石丸治氏はカウンターに並ぶ12色のインクと希薄液から数色を選び、スポイトでインクを少しずつパレットに落として混ぜた。女性が試し書きをしながら「もう少し明るく」と求めると、さらに数滴を加えた。