金融機関の預金通帳。国民の財産が有効に使われる仕組みを【拡大】
■現在の活用案はアバウト過ぎる
自民党、公明党などが「休眠預金活用法案」を次の国会にも議員立法として提出し、成立を目指すとしています。
「休眠預金」とは、10年以上お金の出し入れがない預金のことです。毎年、約1000億円も発生してきました。法的には請求の時効が成立していることから、今まで金融機関は自分の利益に計上してきました(ただし払い戻しの請求があれば返還。実際は500億~600億円が金融機関の利益に)。その「休眠預金」をNPOなどを通じて社会福祉などの公益活動に活用しようというのが「休眠預金活用法案」です。
具体的には、「休眠預金」の移管を受けた預金保険機構が、国が指定する中立的な「指定活用団体」に資金を交付。「団体」は寄付や助成の実績がある「資金分配団体」を通じ、福祉事業をするNPO法人などに活動資金の助成や貸し付けをする。移管された後も、これまでどおり、預けた人が求めれば払い戻されます。諸外国でも「休眠預金」を貧困対策などの公益活動に使っている例はあります。
◆国民的合意形成が大前提
ただ、実際に日本でその仕組みを考えるときは、特に以下の点に留意する必要があると考えます。
第1に、「休眠預金」といってもあくまで人のお金なのですから、「金融機関の利益になるよりは公益事業に使うほうがましだ」という単純な理由だけでは使用してよい根拠が希薄です。まず本人に返還する努力を今まで以上に徹底して行った上で、社会的事業、公益事業に使ってよいという国民的合意を形成することが大前提だと考えます。
第2に、国や自治体が本来やるべき事業や支出すべき予算をNPOの活動や「休眠預金」に「肩代わり」させるようなことがあってはならない、ということです。あくまでその性質上、国や自治体が対応することが困難な諸課題の解決を図るために使われるべきです。