【シンガポール 吉村英輝】小島の都市国家シンガポールでマングローブの植林が本格的に始まった。同国では、外資導入促進へ街路樹などの整備が進められてきた。東南アジアで真っ先に先進国入りしたなか、失われた熱帯特有の自然な生態系を復活させ、環境問題にも本腰を入れた格好だ。日本企業も資金などで支援する。
現地英字紙ストレーツ・タイムズは6日付1面で、「生きた展示場」として、マングローブがはぐくむ多様な生物の価値を指摘。同国北部の自然公園「スンガイ・ブロー湿地保護区」で5日、海岸線約500メートルで、学生やボランティアが、絶滅危惧種のマングローブを含む35種類の苗約2千本を、2年かけて植樹する事業が始まったことを大きな写真とともに伝えた。
同紙によると、1950年に同国の13%を占めていたマングローブ樹林は、浸食などの被害で0.5%にまで減少した。そこに暮らす小動物や渡り鳥たちには、絶滅が懸念される種類も多い。同自然公園は、シンガポール初の東南アジア諸国連合(ASEAN)自然遺産として、環境保護活動が進められている。
5日に行われた植樹式では、コー・ブンワン運輸相が、「緑化へ多くの市民の参加を心強く思う」とあいさつ。現地進出の30周年記念として、植樹や環境教育へ50万シンガポールドル(約4200万円)を寄付したキッコーマンの茂木友三郎取締役名誉会長も参加し、「多くの水を使うしょう油作りには、自然保護活動は重要」と述べた。竹内春久駐シンガポール大使も出席した。
シンガポールは、都市国家としての成長と自然のバランスを重視する姿勢を打ち出している。東南アジアに進出する日系企業にとり、現地経済の発展とともに環境保護活動の重要度は増しているようだ。