□地域防災支援協会 事務局長・野呂順正
組織が大きくなるほど、ある日突然、事件、事故、不祥事などに直面する可能性が高くなる。組織存続のためにも、これらの第一報を現実として受け止め、届いた情報を事実と主観に分けて、次に打つ手を速やかに講じなければならない。組織のトップに立つ人間は、全体を見渡して情報を発信することができる「鳥の目」を持つことが重要である。
「おやぶーん、てえへんだー、ど、土左衛門が堀川に…」-。東京都武蔵野市で1日に行われた防災推進員研修の講義は一風変わったスタイルで始まった。日常の平和を破る八五郎からの第一報が親分にもたらされた。事件を現場で確認している発信者の「虫の目」である第一報は、親分にとって情報の奇襲を受けたようなもので、完全な受け身を強いられる。親分は、組織としての行動を決めるために、新たな情報獲得に向けて動かなければならない。すなわち「鳥の目」による全体の状況把握の手を打つとともに、「虫の目」による第二報、第三報を要求する。それが親分の仕事であり、八五郎もそれをよく理解しているから「てえへんだー」となるのである。
こうした情報要求の概念は普段、誰もがあまり意識することなく自然に用いている。例えばインターネット上で情報を検索するとき、ほぼ無意識に知りたいことを整理してキーボードに打ち込むが、これは情報要求そのものだ。
情報要求という視点で大災害発生時に設けられる災害対策本部を見ると、情報を取り扱う部署の編成が平常時とは全く異なる。平常時に情報の収集・整理を扱う部署は、部下の情報から上司が判断をすることになる。一方、緊急時にはタイムリーに上司が判断し決断を下す必要があり、上司自らが必要な情報の収集を指示することになる。受け身の情報から判断するボトムアップではなくなり、トップダウンで必要な情報を入手することになるわけだ。