【開発物語】三菱鉛筆 油性ボールペン「ジェットストリーム」(2-2) (1/3ページ)

2015.11.23 05:00

ジェットストリームの開発陣。前列左から2人目が生みの親の市川秀寿さん

ジェットストリームの開発陣。前列左から2人目が生みの親の市川秀寿さん【拡大】

  • ジェットストリームのインク(左)は粘度が低いため紙によくしみ込み、乾きやすい

 ■常識外の自由なアイデア、原動力に

 ≪TEAM≫

 1人の開発者の油性ボールペンへの不満から生まれたジェットストリーム。生みの親である市川秀寿さんは「さすがに個人の発想から生まれるのは珍しい」と振り返る。

 だからといって偶然の産物と片付けるのは間違っている。三菱鉛筆は創業1887年と古く、手堅い社風で知られるが、商品開発では自由な発想を認める空気があるという。ジェットストリームの開発メンバーに名を連ねる小泉祐介さんは「若手開発者の挑戦を認め、会社としてフォローもしてくれる」と語る。

 そうした自由な空気は、市川さんが従来の常識を踏み超えていたにもかかわらず、開発を続けられたことでも分かる。

 コンスタントにヒットを生み出すための仕組み作りも怠っていない。その一つにアイデア会がある。開発者たちが仮想のチームを組んでテーマを設定。1年間の活動を経て、最後に開発成果を報告する。この活動には仕事の1割を充てている。

 ジェットストリームと並ぶヒット商品で、芯が回転してとがり続け、片減りを防ぐシャープペン「クルトガ」は、このアイデア会から生まれた。小泉さんは「アイデア会があると自ら文具売り場を見て回り、客がどういうペンを求めているかチェックするようになる」と活動の利点を話す。

 三菱鉛筆は2001年のITバブル崩壊以降、筆記具メーカーとしての原点に回帰し、自社開発にこだわる姿勢を鮮明にしてきた。その研究開発費は連結売上高の5%以上を占める。

 成熟商品とされる筆記具だが、10月に植物由来の新素材「セルロースナノファイバー」を世界で初めてインクに使ったボールペンを商品化するなど、アイデアの種は途切れていない。

 15年1~12月期連結決算は、営業利益が過去最高となる見通し。海外販売の好調が主因だが、開発力がそれを支えている事実は見逃せない。

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