官民ファンドの産業革新機構が、保有する半導体大手ルネサスエレクトロニクスの株式の一部を売却する方針であることが分かった。2013年から主導してきたルネサスの経営再建に一定のめどが付いたと判断し、他の株主へ買い取りを打診しているもようだ。
機構は、東日本大震災や円高で経営危機に陥ったルネサスに1300億円超を出資した。株式を一定期間売却できない契約が解除され、大型投資は回収段階に入る。
機構は現在、経営不振のシャープ本体に出資し再建を支援する案などを検討している。ルネサス株を一部売却し、支援に備える狙いもあるとみられる。
機構は、現在ルネサス株の69%超を保有している。売却先は日立製作所や三菱電機といった母体企業に加え、機構と同時に株主になったトヨタ自動車やパナソニック、キヤノンなどが候補となる。
ルネサス株はドイツの半導体大手インフィニオンテクノロジーズや外資系投資ファンドが取得に関心を示しているとされる。機構は国内有力メーカーの保有比率を高めることで、ルネサスの技術が海外に流出するのを防ぎたい考えだ。
機構が保有するルネサス株の時価は、今月20日の終値換算で8700億円を超える。1社で数%分を引き受けると出資額が数百億円に上ることなどから、交渉は難航も予想される。
ルネサスは人員削減や工場再編を進め、15年3月期に連結最終損益が823億円の黒字(前期は52億円の赤字)へ転換。当時の作田久男会長は「今後は将来の勝ち残りへ向け成長へのギアチェンジが必要」と説明していた。