セーラー万年筆の中島義雄前社長(73)の解職をめぐり会社側と中島氏との間での争いがヒートアップしている。セーラー万年筆は14日、同社が12日に発表した社長交代について、中島氏が「解職決議は無効」と主張していることに対し、定時取締役会の開催日時は事前に決まっていたほか、「定足数、賛成数ともに充足している」とし、手続きは有効だと反論した。一方、中島氏は14日、「東京地裁に仮処分を申請した」ことを明らかにした。両者とも一歩も引かない構えで、争いは泥沼化の様相を呈してきた。
同社は中島氏の解職理由について、約1年前に中島氏に講演など私的な活動を控え、会社の業務に専念するほか、知人が仲介する仕入れ商品を当社に持ち込まないことなどを求めた。
しかし、改善が見られなかったことから、11日に開催した社内取締役会で中島氏を除く、4人の取締役が辞職を求めたという。中島氏がこれを拒否したため、12日に開催した定時取締役会で中島氏の社長解職を決定した。
中島氏は14日、フジサンケイビジネスアイの取材に応じ、会社側の主張について「講演などは投資家向け広報(IR)活動の一環で、退任理由には当たらない」と反論するとともに、「12日の取締役会は正式に承認されていない。決議は無効だ」と改めて訴えた。両者の主張は平行線をたどっており、混乱は長引きそうな気配だ。
中島氏は旧大蔵省(現財務省)出身。主計局次長などを務めたが、金融機関による過剰接待問題で2005年に退官。09年12月からセーラー万年筆社長に就いた。同社の業績はロボット機器事業の不振などで、14年12月期まで7期連続で最終赤字を計上するなど、長らく低迷している。
証券市場では「お家騒動をしてる場合ではない。経営陣は業績回復に力を注ぐべきだ」(中堅証券)と冷ややかな声もあった。