両社の火力発電の出力規模は計約6800万キロワットと、国内のほぼ半分を占めるため、既設発電に統合の枠組みが拡大すれば市場での競争力は競合の脅威だ。
原子力発電所の立地に恵まれず、浜岡原発(静岡県)以外に原発を持つことができなかった中部電は、火力発電の比率が高い。独自に燃料調達手法や運転技術などを磨いてきた火力事業は同社の「生命線」だ。それだけに、昨年末にフジサンケイビジネスアイの取材に応じた勝野哲社長は、既設発電事業の統合について「現時点で話せることはない」と述べ、慎重姿勢を崩さない。
ただ、「時間と労力を取られる大変な作業だ」(勝野氏)というジェラへの発電事業移管に踏み切った事実は重い。発電が一緒になれば、既に自由化が始まっている工場向けなど大口電力では東電、中部電とも相互のサービスエリアで電気を売りやすくなる。“虎の子”の火力発電を切り離すことは「重大な決意の表れになる」(中部電幹部)ことから、業界関係者からは「同じ電気を売るなら販売も同じにすればいい」と、火力提携が販売を含めた広範な事業統合に進むとの観測が出ている。なかには東電との将来の経営統合の可能性を勘ぐる声さえもある。