「足疲れるね、夢中になっちゃう」「この前はヒールがあってダメだったから、今日は運動靴を履いてきたの」…。
お年寄りが、ランダムに顔を出す4匹のヘビを、足で踏んで「退治」する。「ドキドキへび退治II」は一見、昔ながらのゲーム機だが、実は「リハビリサポートマシン」。遊ぶ人の反応に合わせてゲームのテンポが自動的に変わるため、半身まひの人であっても自分のペースで遊ぶことができ、脳血流の増加や、転倒防止に必要な足の筋肉強化の効果も実証されている。
販売しているのは、さいたま市中央区の「サイ」。従業員2人の小さな会社だが、手がけるリハビリ用ゲーム機は医療福祉施設を含めて全国の老人ホームなど約250施設で導入されている。1月には埼玉県の渋沢栄一ビジネス大賞のベンチャースピリット部門大賞に選ばれた。
◆九州大病院と協力
高橋正勝社長(39)が同社を設立したのは2011年。ゲームセンター向け機器を扱う「ALIES」(宇都宮市)の社長だったが、「業務用ゲームはスマートフォンなどに押され継続的な売り上げ増は期待できない。自分たちのゲーム技術を生かして何かを発信していこう」と、秩父市のサン電子工業などと共同出資で立ち上げた。
ペットプリクラなど“鉱脈”探しを続ける中で、ある老人ホームから「ゲーム機がほしい」と要望があり、中古のパチンコ機を提供したところ好評だった。そこで、オリジナルのゲーム機を12年春頃から介護施設に売り込んだが、「一台も売れなかった」と苦笑する。
「ただ遊んで楽しめるだけならば、1万円の家庭用ゲーム機でよかった。業務用ゲーム機のメリットは全身を動かせる体感型。体を動かすならリハビリにも応用したいと言われ、それでリハビリ用ゲーム機を目指すことになった」