【スポーツi.】アメフット 日本の子供へ普及進むか

2016.6.1 05:00

NFL第50回スーパーボウル、ブロンコス(AFC)対パンサーズ(NFC)戦。アメリカンフットボールは米国では人気スポーツの一角をなす=2月7日、サンタクララ(AP)

NFL第50回スーパーボウル、ブロンコス(AFC)対パンサーズ(NFC)戦。アメリカンフットボールは米国では人気スポーツの一角をなす=2月7日、サンタクララ(AP)【拡大】

 □二松学舎大大学院非常勤講師・宮田正樹

 日本ではまだまだマイナーなスポーツであるアメリカン・フットボール(以下、フットボール)の小学生への指導と普及に努める知人がいる。彼が子供の頃にミニ・ブームがあり、パンの景品にNFLチームのトレーディング・カードが付いていたことからフットボールに魅せられ、高校・大学・社会人と熱中したという。彼によると、フットボールは機敏で運動能力に長じた子供だけでなく、身体は大きいが足が速くないため他のスポーツで活躍の場がない子供にも役割が与えられるなど、「適材適所」で活躍の場を与えるすばらしいスポーツという。

 毎週、ボランティアとして、関東では3チーム(世田谷ハリケーンズ、ノジマ相模原ライズJr.、川崎リトル・ジュニアグリーンマシーン)しかない小学生チームのコーチをする彼の話を聞きながら、フットボールの普及活動を考えてみた。

 ◆けがはほとんどなし

 NFL選手の脳振盪(しんとう)による脳障害問題が近年話題となっているように、「フットボール=激突・タックル=危険」とのイメージが保護者に染みついているかもしれない。

 しかし、小学生の場合はボールを持つ選手をタックルして倒す代わりに、ラップアップ・ルール(第三者から見て、相手を捕えてプレーが止まったと判断できた時点でプレー終了)を適用するなど安全に配慮したルールを採用し、「防具」を装着して試合を行うため、けがはほとんど生じないそうである。

 ヘルメットやプロテクター、その他の「防具」を装着した選手の姿は格好良く、フットボールの魅力の一つだ。一方で、防具一式が「お金が掛かりそう」というマイナスイメージを醸し出しているのではないかと尋ねた。彼のチームの場合、防具はチームが保有し、無償で選手に貸与するため、保護者に負担を与えていないそうだ。

 日本で児童への振興を図るには、義務教育における「体育」の授業科目に採用されるか否かが最も大きなファクターだと思われる。そこで小学校の「学習指導要領」をひもといてみた。

 体育の科目「ボール運動系」は次のように規定されている。

 ボール運動系領域は低学年と中学年は「ゲーム」、高学年は「ボール運動」で構成する。

 競技分類にはバスケットボール及びサッカーの「ゴール型」、ソフトバレーボールの「ネット型」、ソフトボールの「ベースボール型」の3種がある。

 ゴール型はコート内で攻守が入り交じり、手や足などで攻防を組み立て、得点を競い合う。ネット型は、ネットで区切られたコートの中で攻防を組み立て、一定の得点に早く達することを競い合う。ベースボール型は攻守を規則的に交代し合い、一定の回数内で得点を競い合うことを課題としている。中学年のゲームと高学年のボール運動は、3種が行われる。

 これらから考えると、フットボールはゴール型に分類されると思われるが、ベースボール型とも考えられる。各型で競技が例示される中、学校現場の状況に応じて別競技の指導も可能としているが、「危険」「お金が掛かりそう」との思い込みを考慮すると、フットボールが体育の科目に採用される可能性は極めて低いと言わざるを得ない。

 ◆寄付金控除の拡充

 関東の小学生リーグの上部団体は「NPO法人東京都アメリカンフットボール協会」だが、資金力はなく、知人のチームも創立者でありオーナー的立場の人(個人)のポケットマネーに支えられるところが大きい。関西の小学生リーグ「チェスナットリーグ」は、スポーツ用品販売会社がスポンサー兼事務局として運営し、私人のポケットマネーに支えられた存在である。

 こうしたポケットマネーは、現状の税制では提供先が「認定NPO法人」や「公益社団法人」などでない限り、「寄付金控除」を受けられない。個人・企業の境なく、スポーツ文化の育成・普及に供出された場合、寄付金控除を受けられるようにすることも検討されてもよいのではないだろうか。

                   ◇

【プロフィル】宮田正樹

 みやた・まさき 大阪大学法学部卒。1971年伊藤忠商事入社。物資部、法務部を経て、2000年5月、日本製鋼所。法務専門部長を経て、12年10月から社団法人GBL研究所理事・事務局長(現在に至る)。非常勤講師として04年から二松学舎大学大学院で「企業法務」、帝京大学で「スポーツ法」(08年~16年2月)に関する教鞭(きょうべん)をとっている。

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