□グローウィル国際法律事務所代表弁護士・中野秀俊
あらゆる「モノ」が直接インターネットにつながり、モノ同士、あるいはモノと人とが相互に通信できるIoT(Internet of Things)時代が到来した。例えば、橋や建物といった公共建築物にセンサーを取り付けて強度を常に把握することで適切なメンテナンスができ、事故を未然に防ぐ。サッカー選手のすね当てにつけたセンサーから、疲労度や戦術の理解度を測るといったサービスも開発されている。
IoTとは「ハードウエア」と「ソフトウエア」の融合であり、「製造業」と「IT」の融合といってもいい。このためハード、ソフトの両面でさまざまな法律を検討する必要がある。製造業だから、ソフト会社だから知らないというのは通用しない。
具体的に気を付けるべき法律を解説する。ハードに関しては特許権・著作権などの知的財産権がある。知的財産権保護の対象は、形として「表現」されているものであり、アイデアなどの無形のものは除かれる。そこで、IoTサービスのモノの部分(ハード)について、特許権や商標権の登録をしたり、著作権侵害の有無を監視したり、知的財産権を共同管理する仕組み(匿名組合など)が必要だ。
自社で取得した知的財産権も活用できる。例えば他社と知的財産権について共同開発契約やライセンス契約を結ぶ、知的財産権を担保に融資を受けるなど法務問題の検討は多岐にわたる。
一方、ソフトの法務については、例えばウェブ上でモノを販売する場合、特定商取引法の表示を求められるケースが多い。また、ウェブサービスで仮想通貨・ポイントを発行するなら、資金決済法の適用を考える必要がある。特殊な法律であり、専門家の助言のもと慎重に検討する必要がある。