
共用の食堂で夕食のカレーを一緒にとるコレクティブハウス聖蹟の住人=6月、東京都多摩市【拡大】
おひとりさま中高年の新たな暮らし方として、住人が緩やかな共同生活を送る賃貸住宅「コレクティブハウス」が注目されている。食堂やリビングを共用、掃除などの分担はあるが風呂や台所は自室にある点が一般的なシェアハウスとの違い。「プライバシーを確保したいが、老後も人とつながっていたい」と選ぶ人が多いようだ。
「誰とも話さない休日があり、このままではまずい、と危機感を覚えた」。6月中旬の日曜日。「コレクティブハウス聖蹟」(東京都多摩市)の食堂で、約6年前、母親をみとったという日本語教師の女性(59)がコレクティブハウスを選んだ理由を話してくれた。住人には4歳の女の子もいて、取材中の室内に、この子がつくったシャボン玉が飛び込んできた。
独身で子供もいない。「引っ越してきた後、夜中に肩を脱臼したとき、隣人が救急車を呼んで病院に付き添ってくれて助かった」。東日本大震災の際には住人同士食べ物を持ち寄って過ごした。
居住者は7月現在、赤ちゃんから80代まで16世帯26人。この日も食事当番の住人が作ったカレーが並び、複数の世帯が食卓を囲んだ。食べるかどうか、何時に食べるかは自由。大人は月1、2回の夕食作りや共用部分の掃除をするが、高齢者は体の負担が大きい買い物ではなく、調理補助に入るなど、運用は緩やかだ。
部屋はワンルームから2LDKまで20戸あり、家賃は月6万~14万円程度。住人による共同運営の支援を手掛けるNPOコレクティブハウジング社(東京)によると、入居希望者向け説明会には、死別や離婚を経験した50~60代の女性や単身男性の参加が増えている。
同NPO理事の狩野三枝さんは「子供がいてもいなくても、自立しながらほどほどにつながる暮らしを望む人は多い。少子高齢化が進み、これからの住まい方として、一つの選択肢になるのでは」と提案している。