
山口征人【拡大】
「ビジネスのあらゆるフェーズを知らなければ、本当の意味での企業支援はできない」。そう話すのは、ビー・エム・ダブリュー日本法人の立ち上げメンバーとして幅広い分野で活躍した経験を生かし、地方企業の新規事業開発や経営支援を展開する神谷恭一さんだ。財務・経理や人事を担当する管理部門でキャリアをスタートし、バブル崩壊後の厳しい時期には営業部門の管理職として、全国を股に掛けて業績拡大に貢献した。その後はファイナンスを手掛ける関連会社へ移籍し、なじみの薄かったクルマの残価設定型ローンを日本に広げた実績がある。
神谷さんは独立し、現在サーキュレーションを通して紹介されたガソリンスタンドやレンタカー事業、車検などのトータルカーサービスを展開する地方企業の新規事業展開を支援している。お膝元の県内では石油関連事業で約33%のシェアを持つ会社だ。しかし彼は、支援当初の段階で「今は新規事業を始めるべきではない」という予想外のアドバイスを行った。高いシェアの割には既存顧客とのグリップが弱く、インターネットによる集客にもうまく対応できていない。企業の数字を洗い出した神谷さんの目には、新規事業の前に既存事業のてこ入れを図ることが急務だと映った。
さらに同社では、組織の再構築も課題となった。管理職10人、一般社員100人にヒアリングを行ったところ、総じて仕事へのモチベーションが低い状況だったという。「県内の出身地域によって組織内ヒエラルキーが構成されている」という、いわゆる地域閥が社内に存在することも組織が硬直化する原因となっていた。これは、東京で仕事をしているだけでは見えてこない問題。前職時代に全国各地を渡り歩いた神谷さんだからこその気付きだった。社員一人一人に合わせて評価制度をカスタマイズし、業績拡大に向けた組織の立て直しが進められている。