米大統領にトランプ氏 日本は商機へ変えよ
米大統領選は大方の事前予想を覆して共和党トランプ氏の勝利が確実になった。
新政権は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の撤回など、グローバリゼーションの巻き戻しに取り組むだろうが、たじろぐことはない。日本にとってはビジネス・チャンスととらえる発想こそが必要だ。
低い利益率への不安
今回の米大統領選がこれまでと異なるのは、景気との関連が希薄な点だ。緩やかに景気は回復したが、製造業などの実質賃金は上がらず、不満を持った階層が保護貿易と排外主義を叫ぶトランプ氏に共鳴した。
グローバリズムとは金融市場が示す基準に企業が従うことだ。国境を越えて移動する巨額の資金を引きつけるためには、企業が資産を刈り込み、労働コストを抑えて利益率を上げ、株主に利益還元する。
米国流自体のパフォーマンスはどうか。日米の税引き前経常利益に対する総資本と株主資本の比率を比較してみた。米国の利益率は2008年9月のリーマン・ショック後めざましく回復したあと、いずれも下降線をたどっている。対照的に日本は13年以降、総資本、株主資本の利益率とも上昇を続けている。水準はいずれも日本が米国を上回っている。
13年に始まったアベノミクスの成果とも言えそうだが、実質経済成長率は日本が0%前後で低迷しているのに対し、米国は2%前後である。資本の利益率の不振からすれば、米国の金融主導型グローバル・モデルは落ち目である。それこそが、米エスタブリッシュメント(支配階層)のTPPに対する消極姿勢を生んでいる背景だろう。