【i.コラム】日露から考えるビジネスの「利」と「義」 (2/2ページ)

2016.12.21 05:00

 そこで経済界が選んだのは、会社は株主のものとする米国式の自己資本利益率(ROE)主義だ。従業員、消費者や地域社会も株主と利害を同じくする従来の考え方が大きく後退した。

 まさに経営トップはROEの引き上げに邁進(まいしん)し、賃金を抑える。異次元金融緩和の日銀が年間80兆円もカネを刷っても、銀行は融資を渋り、企業は設備や雇用に利益を回さず、株主資本の蓄積に励む。その結果、20年デフレから抜け出られない。ブラック企業は減らず、社員はサービス残業に追われ、過労死の悲劇は後を絶たない。

 個々の企業が正しいと信じてROEを高めた結果が経済社会の停滞。それはケインズのいう「合成の誤り」そのものだが、もとはといえば、経営哲学の貧困さにある。従業員を含め社会全体の利益を考える義のマインドがいつの間にか、株主利益イデオロギーに押さえ込まれてしまった。

 日露首脳会談から以上のように連想したのは、筆者の思い過ごしだろうか。(産経新聞特別記者 田村秀男)

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