□アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
リオデジャネイロオリンピックの競泳女子200メートル平泳ぎで金メダルに輝いた金藤理絵選手が所属契約しているフットマーク。事業内容は学校水泳、体育用品、一般水泳用品、プール備品、遊具、介護用品などの企画・製造・販売で、国内の学童用水泳用品では高いシェアを持ちニッチトップの地位にある。同社を大きく成長させたのは、磯部成文会長だ。
終戦後の1946年、戦地から帰った磯部会長の父親が始めたおむつカバーの製造・販売がスタート。磯部会長は大学卒業後、いずれ家業を継ぐため大阪・船場の問屋で3年間の修業を終え、実家に戻った。社員数人で、扱っていたおむつカバーは夏場には販売が鈍り、さらに紙おむつが市場に出回ると全く売れなくなった。
そんな状況で考えついたのがおむつカバーと同じ材料のナイロンで作る水泳帽子。立ち上がりは大変苦労したが、70年頃、文部省(当時)の方針で小・中学校の体育授業に水泳が導入され、ヒット商品となる。磯部会長は「東京オリンピックで日本の水泳が米国に惨敗し、米国にならって日本にスイミングスクールがどんどん増えたことが市場を広げた」と振り返る。
筆者は、東京商工会議所が2003年から主催する「勇気ある経営大賞」の第1回受賞企業を取材し、1冊の本『変える勇気が会社を強くする』に上梓した。この受賞企業の一つがフットマークだ。強みは徹底して顧客の声を聞いて商品開発を行う企画力で、磯部会長は「1/1の視点に立った商品づくり」と表現する。
新商品開発の出発点の一つは世の中の人が顕在的・潜在的に不便・不満・不安といった“不”を感じていることに対する解決策を提案することであり、磯部会長の商品づくりは真にこのことを表現している。