経営再建中の東芝が進めている半導体子会社「東芝メモリ」の売却で、優先交渉先となった産業革新機構を中心とする「日米韓連合」との契約が8月以降にずれ込む可能性が出てきた。売却に反対し東芝と対立する米ウエスタンデジタル(WD)による訴訟リスクへの対処のほか、韓国半導体大手SKハイニックスの連合への関わり方をめぐり、調整に時間がかかっているからだ。
「意見を変える人がいてややこしい。調整のピッチが緩んだ」。東芝関係者はこう漏らす。
当初目標とした6月28日に契約できなかった理由について、東芝は「連合には複数の関係者がおり、意見の取りまとめに時間がかかっている」(綱川智社長)と説明していた。ただ、急ごしらえで日米韓連合を組成した反動も出ている。
優先交渉の決定時点で、東芝メモリと同業のSKは出資ではなく融資で連合に参加し、各国の独占禁止法に抵触するリスクを抑える計画だった。しかし、それを覆して将来的に最大33・4%の議決権を取得する権利のある転換社債を引き受けたい意向を示した。
連合の日本企業関係者は「論外」と批判。SKが一定の議決権を持てば独禁法審査が通りにくくなる恐れがあるからだ。このため、SKが社債を取得するとしてもさまざまな制限をつける方向とみられ、その調整に時間がかかっている。