金融庁が金融機関の経営状況を点検する際の手引書「金融検査マニュアル」を廃止し、新たな指針の策定を検討していることが分かった。マニュアルに基づいた画一的な検査方法を改め、金融機関との対話に重点を置いた体制に変える。
1999年に運用が始まった金融検査マニュアルは、資産査定や業務運営面を中心に細かく点検し、できるだけ銀行に経営上のリスクを取らせないことが主眼だった。90年代のバブル崩壊後、巨額の不良債権を抱え、経営危機に陥った金融機関が続出したことが背景にあった。
だが、不良債権処理が一服し、経営が安定した銀行が増加。金融機関の新たな課題は、人口減少や低金利といった収益を上げづらい経営環境にあると金融庁は分析しており、経営の持続可能性や、地域貢献などに重点を置いた検査に移行する。
具体的には形式的な点検項目を減らし、経営陣や担当者との対話を通じて金融機関のビジネスモデルに無理がないかなどを確認する方式に見直す。
地域企業や経済の活性化のため、適切なリスクを担っているかどうかも調べる。対話の際には他の金融機関の取り組みを紹介し、経営に役立ててもらう。金融庁は、新たな検査手法を示した「ハンドブック(仮称)」を策定し、来春以降の運用を目指す。