IT産業の聖地、米カリフォルニア州シリコンバレーに進出して、セキュリティー技術の「世界標準」を目指す動きも出てきた。
他人にメールで送信した文書ファイルを、手元から遠隔操作で消せる-。インターネットの普及によって、機密情報の漏洩(ろうえい)が大きな問題となる中、こんな「魔法」のようなソフトウエアが注目されている。
デジタルアーツ(東京)が開発した「ファイナルコード」。暗号化ソフトの一種で、閲覧できる人や期間などを細かく設定でき、アクセス履歴も把握できる。いざとなれば消去して情報流出を防ぐ。マイナンバー導入などを背景に、国内販売が好調となっている一方で、2014年に設立したシリコンバレー子会社を拠点に海外事業を本格化させている。
IT業界では基本ソフトからクラウドまでほとんどを、米国中心の巨大企業が押さえる構図が強まる。道具登志夫社長はそうした現状に危機感を抱きながらも、重要データの保護分野では「日本からデファクトスタンダード(事実上の国際標準)を取りたい」と力を込める。
「守らないセキュリティー」。これまでの常識を打ち破るソフトを展開するのがゼンムテック(東京)だ。書類のデータをシュレッダーにかけるように細かく分割した上で、その一つ一つを暗号化して解読不能にする。それらをパソコンとスマートフォンといった複数の端末に分けて管理。分割した情報を1カ所に集めると元のデータが復元される仕組みだ。使わないときは「無意味な情報」として保存されているので、そもそも情報漏洩は起きようがないという。「われわれのソフトを使えば、これまでのようなセキュリティー対策はいらなくなる」と田口善一社長は胸を張る。