日本人は無類のマラソン好きといわれる。苦しさに耐えながら、粘って、粘って走る。42.195キロのコースには上り下りがあり、追い風のときも向かい風のときもある。人生の縮図として、わが身を重ね合わせる人がいる。
この夏、ロンドンで陸上の世界選手権が開催された。テレビ中継したTBSの男子マラソンの平均視聴率は13.7%、瞬間最高は20.2%、女子の平均は13.6%、瞬間最高は15.2%だった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。男女とも2桁にのせ、改めて、関心の高さを証明した。
視聴率は健闘したものの、肝心の競技成績は男子の川内優輝が9位に入ったのが最高。女子は出場した3選手が16、17、27位にとどまり、22年ぶりに入賞を逃した。
2020年東京五輪まで3年を切ったにもかかわらず、世界の高く厚い壁に跳ね返されてしまった。
◆「私なら金」
かつて、日本は「マラソン王国」といわれた。四半世紀前の1992年バルセロナ五輪で、男子は森下広一が2位、中山竹通4位、谷口浩美8位、女子は有森裕子が2位、山下佐知子は4位に入った。
大会前、五輪代表のイスをめぐり、有森と松野明美が競り合い、日本陸上競技連盟と両陣営は揺れに揺れた。代表決定前の記者会見で松野が「確実にメダルをとれると思っているので、私を選んでください」と猛烈にアピールした。