独自の仮想通貨 資金調達に活用、新興企業で拡大 ルール未整備、トラブルも

 企業が独自の仮想通貨を発行して、投資家から事業資金を集める新手法「新規仮想通貨公開(ICO)」が新興企業などで広がっている。株式公開よりも手軽に実施できるためだが、ルールが法律などで定まっていないことからトラブルや詐欺などの犯罪につながる恐れがある。

 ICOでは企業が発行する独自の新しい仮想通貨を、投資家がビットコインなど広く流通している他の仮想通貨で購入する。企業は手に入れたビットコインなどを取引所で法定通貨に換金し、事業への投資に当てる資金を手に入れる。

 投資家は手に入れた新しい仮想通貨を使って、発行元企業のサービスを割安で利用したり、事業利益の配当を受け取ったりできる。

 ICO情報提供サイトのコインスケジュールによると、世界での2017年の調達額は9月末時点で既に約22億ドル(約2500億円)に上り、16年の約9600万ドルから急激に膨らんでいる。

 国内でもフィンテック関連企業のエニーペイ(東京)など、ICOの支援事業を手掛ける会社も現れ始めた。

 一方でICOは悪用される懸念がある。例えば、架空の事業計画で資金を調達し、仮想通貨を発行せずに逃げるようなケースだ。国内では違法ではないがICO自体を規定した法律はない。

 仮想通貨の問題に詳しい斎藤創弁護士は「ICOを実施する企業は、事業計画の進捗(しんちょく)といった情報開示を少なくとも自主的には行うべきだ」と指摘している。