「訪日客だけでない」、百貨店の化粧品販売30カ月プラス


【拡大】

  • 来店客でにぎわう松屋銀座店の化粧品売り場。8月に改装して出店ブランドを増やした=東京都中央区(山沢義徳撮影)

 三越伊勢丹ホールディングスと高島屋、大丸松坂屋百貨店を運営するJ・フロントリテイリングは1日、10月の既存店売上高が前年同月比約1~2%増だったと発表した。業界全体では、ネット通販との競争が激しい衣料品販売が2年前と比べ9%落ち込んでいるが、化粧品は逆に35%伸長。直近の9月まで30カ月連続の右肩上がりだ。

 松屋銀座店(東京都中央区)は8月、1階の喫茶店を化粧品売り場に改装し、出店ブランドを2つ増やした。訪日客が多い阪急うめだ本店(大阪市北区)は組織を改編し、服や雑貨を扱う「婦人部」から「化粧品部」を独立させた。Jフロントの山本良一社長は「定期的に来日し、まとめ買いする客も多い」と話す。

 訪日客が少ない地方店でも、高崎高島屋(群馬県高崎市)は9月の全館改装で化粧品の出店ブランドを23から30に増やした。

 松屋のバイヤー、寺本知香さんによると、百貨店にしか出店しない高級ブランドが近年、容器にイニシャルを刻印する口紅など「SNS(会員制交流サイト)映え」する商品を増やし、若い女性の人気を集めている。服やバッグと比べ「化粧品は20代でも手の届く高級品」だという。

 しわを改善する医薬部外品の美容液など機能性が高いヒット商品の登場も大きい。専門的な肌診断など百貨店ならではの細やかなサービスが客の心をつかむ。

 「好調のベースは、働く女性の増加だ」。日本百貨店協会の山崎茂樹専務理事は66%に達した女性就業率(平成28年)を挙げ、「管理職の女性も増えて“それなりの化粧品”を求めるニーズが高まった」とみる。

 化粧品の好調は、業界の課題である若年層の取り込みに役立っている。「さらに衣料品への買い回りにつなげたい」(京王百貨店)という各社の工夫が“百貨店復権”のカギとなる。