洋上風力発電は着床式が欧州で急速に普及が進み、日本でも茨城県鹿島港、山形県酒田港、北海道瀬棚港で着床式の事業化が行われています。しかし、日本の海域は陸から少し離れるだけで水深が深くなるため、浮体式の開発も期待されています。
着床式は2010年までに約240万キロワット導入されていますが、浮体式はノルウェーとポルトガルで2000キロワット級の実証機があるのみ。そうした中、福島沖(水深120メートル)で世界初の本格的な浮体式洋上風力発電実証研究事業が進められています。プロジェクトを監督する経済産業省資源エネルギー庁の関係者が10月からの発電開始を前に現場を視察するとのことで、同行させていただきました。
◆福島沖20キロへ向かう
9月中旬、福島県いわき市の久之浜港は晴天に恵まれ、波も穏やかです。午前11時半、「はつかぜ号」に乗船し、20キロ先の沖合へと向かいました。
13年度の第1期では、出力2000キロワットの浮体式洋上風車と浮体式洋上変電所を係留して、発電の実証研究を行います。計画では、洋上風車と洋上変電所の係留作業と、風車と変電所の間のケーブルの接続を9月中に終了する予定です。資源エネルギー庁新エネルギー対策課課長の村上敬亮氏にこれまでの作業の進捗(しんちょく)状況について伺いました。
まず当初の予定より3週間ほど作業が遅れているとのこと。主な理由は天侯で、海が荒れて、資材や作業員を運ぶ作業船を横付けできずに港に戻る日が続きました。洋上変電所は750メートルのチェーンが4本、洋上風車は850メートルのチェーン6本で係留されていますが、係留作業が想像以上の困難を伴いました。ワイヤを取り付けて海中に沈めてあるチェーンをウインチで引っ張り上げる際、チェーンがねじれてだんごになったり、チェーンを引っ張り上げる最中に落ちたりとトラブルに見舞われました。