原子力規制委員会は10日、東京電力福島第1原発の構内と外部を隔てる敷地境界で計測される放射線量について、廃炉の実施計画で定めた年1ミリシーベルト未満とする目標の約8倍に上る状態が続いていることを問題視し、東電側に期限を決めて低減するよう見解を示した。専門家や東電を交えた検討会で議論した。
規制委によると、境界線量は昨年3月に最大で同0・5ミリシーベルトだったが、同4月に地下貯水槽の汚染水漏れでタンクに移水などにより、同12月には最大で同7・8ミリシーベルトまで上昇した。
タンク内の汚染水に含まれるストロンチウム90などから出るベータ線がタンク鉄材と反応し、透過能力が強く遠くまで到達する「制動エックス線」が発生。タンク増設で大量のエックス線が周囲の空間線量を上昇させたことが主な原因だ。
検討会合で規制委の更田豊志委員は「(年1ミリ未満とした)目標値が青天井で続いているのは良いことではない」と述べ、監視体制強化の必要性を強調。一方、高木郁(いく)二(じ)京都大教授は「(原発周辺に)住民はいない中で、放射線防護を適応するのはどうか。一時的に規制を緩めた方が収束が早くなるのではないか」などの異論も出た。