【視点】産経新聞正論調査室長・工藤均 防潮堤建設問題 (1/3ページ)

2014.1.21 05:00

 ■「浜の文化」までは奪えない

 東日本大震災の被災地・宮城県気仙沼市内で計画されている巨大防潮堤。その建設や高さの是非をめぐる論争は、地元住民と県との対立というだけでなく、政府幹部、安倍晋三首相夫人までもが加わるなど大騒動となっている。

 国は数十年か百数十年に一度の割合で発生する明治三陸地震津波(1896年)級のレベルに対応できる防潮堤の整備の方針を打ち出した。被災3県の沿岸約400キロに約8500億円の国費が投入される予定だ。実際に防潮堤の高さを決めるなど整備計画を作成するのは県や市町村。気仙沼市のケースも県は国の大方針に沿って計画した経緯があり、見直しに慎重な姿勢だ。

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 気仙沼市内の防潮堤計画が遅れているのは5カ所。ほとんどは高すぎることへの反発で、なかには宮城県内で最も高い14.7メートルの建設計画もある。

 昨年12月に開かれた自民党環境部会に出席した安倍首相夫人の昭恵さんは現地に足を運んだ経験を踏まえ、「行政に声が届かないところで反対意見がたくさんある。景観が崩れて住みたくないと言っている人もいる」と指摘。翌日には、菅義偉官房長官も「私も(防潮堤)計画を知ったとき、これはやはり問題があると思った。もっと緑があっていいだろう」と話した。まちづくりが進むなか、津波を食い止めることを最大の対策とした計画だけでは対応し切れない状況が出てきたといえよう。

 震災で気仙沼市では1000人以上が犠牲となった。「高くて頑丈な防潮堤を」とする行政の方針は間違ってはいないが、大きな問題が存在する。気仙沼市が気仙沼市であるために欠かせない、住民たちが培ってきた「浜の文化」が大きく変貌してしまいかねない、ということに他ならない。

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