■電気による火災から学ぶ
人類は、困った経験から考え、新しいものを生み出したり他から学んだりして発展してきた。火を使い始めた人たちは、寒くて困っていたかもしれない。文字を使い始めた人たちは、記憶が薄れて困っていたかもしれない。あるいは、自分は大丈夫でも、寒さに震える子供やお年寄り、約束の覚え違いで争う人々などを見て、何とかしたいと思ったのかもしれない。
自分や仲間が困った経験を生かした集団は栄え、そんな人類が地球を覆っていった。今も、困った経験から何を学びどう行動するかが、私たちの将来を左右する。
たとえば1月3日、有楽町駅近くで起きた火災で新幹線が止まった。筆者はこの日、幸い動いていた九州新幹線直通のさくらで広島から博多に行ったのだが、どちらの駅でも、東京方面に向かうらしい多くの人が困っていた。有楽町の火災の影響が、はるか離れた広島や博多にまで及んでいたのだ。ここから学べることはないだろうか。
火災の原因はまだ調査中らしいが、水槽のポンプの配線に、ショートした跡が残っていたとの報道がある。電気によって火が出た可能性があるのだ。
◆電源コードからの発火
調べてみたら電源コードや配線器具からの発火は、ずいぶん起きている。製品評価技術基盤機構(NITE)によれば、2008年から13年の5年間で、電気製品関連の事故は999件報告された。製品別では、延長コードによるものが284件と最大だった。他の製品の事故でも、電源コードからの出火が相当ある。去年起きた火災のうち、原因がわかったものの例を見てみよう。
Aさんは、家でこげくさい臭いがしたので見てみると、ヘアドライヤーとその周りが焼けていた。ドライヤーの電源コードを引っ張ったりねじったりして使い、芯にある銅線が切れたらしい。切れたところから火花が出て線を覆ったビニールが燃え始めたようだ。