日本初の官営製糸場である「富岡製糸場」が26日、世界文化遺産への登録を勧告された。登録件数の増加により世界文化遺産の審査が厳しくなる中、富岡製糸場は推薦書の内容がほぼすべて認められる「パーフェクトな勧告」(文化庁担当者)に。明治日本の高い技術革新と、海を越えて絹産業の発展をもたらした歴史的価値が、世界に認められることになった。
産業の近代化を急ぐ明治政府が西欧から最新技術を導入し、明治5年に設立された富岡製糸場は、日本初の本格的な器械製糸工場だ。その後、養蚕技術を独自に改良して大量生産を実現し、技術交流などを通じて世界の絹産業の発展に貢献した。
民営化されて昭和62年まで現役で稼働。操業停止後も所有企業が建物を保全し、群馬県富岡市に寄贈された。文化庁は「これだけ大規模な工場が残っているのは奇跡的だ」と称賛する。
だが、文化庁関係者は今回の勧告について「決して楽観視はしていなかった」と打ち明ける。世界遺産の審査が年々厳しくなっているからだ。昨年の富士山で構成資産の一つである「三保松原(みほのまつばら)」(静岡市)の除外を求められたように、ここ数年、日本の推薦案件はイコモスから、条件付きで登録勧告される傾向が続いていた。