IPイノベーションズ代表取締役浦山昌志【拡大】
■人材開発・育成はトップとともに
IBMが世界61カ国31業種の700人を超える最高人事責任者(CHRO)を対象に調査した「IBM Global CHRO Study 2010」によると、「人材育成部門は、変化に素早く対応するだけでなく、経営陣の支持を獲得して、事業戦略の実行を推進できる従業員を育成することが求められる」と述べ、「市場でのビジネスを差別化するコンピテンシー(能力・資格・適性)を特定し、それを採用、育成、業務評価のプロセスに組み入れる必要がある」と結論付けている。つまり、これからの人材開発部門は、決裁権限を持たず、トップと経営企画部門が決めた人材開発方針を執行するように変わる可能性が高い。
こんな話があった。大手通信機メーカーの人材開発マネジャーのA氏は昨年、社長から「人材育成の課題や方向性は今後、経営企画室の指示に従うように」と突然言われた。経営企画室長からは「研修はすべて見直す。育成方針はこちらから指示するので、研修の提案と運営案を作成してほしい。効果測定を含め、意思決定に必要な情報を提供するように。それができなければ、人材開発部門はアウトソースする」と言われた。
それまで研修のアンケート結果は良く、何も問題がなかっただけに、A氏は大いに戸惑った。このような状況に陥っている人材開発部門は少数であったとしても、これから同様のケースが増えてくると予想されるのである。