■人材育成は信頼関係つくれる組織から
優秀な若者を多大なコストをかけて採用しても、やる気をなくし退職してしまう人が後を絶たない。しかし人材を育成できない企業が、困難な現代を勝ち抜いて成長することはあり得ない。そこで望ましい職場内教育(OJT)について解説する。
入社3年目のAさんは、上司から「来年新人が入ってくるから、君にOJTリーダーになってもらう。大切に育成してくれよ」と声をかけられた。人事からは、新人フォローのための注意事項について30分間ほどの説明があったのみである。
ただでさえ忙しいし、何をやればいいのか分からず不安になったAさんは、世話になったプロジェクトリーダーにOJTトレーナーのノウハウを教えてもらうことにした。その先輩は、太平洋戦争当時の連合艦隊司令長官だった山本五十六の言葉「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」を引用しながらアドバイスをくれた。
Aさんは、新人が1年間で覚えなければならない仕事とそれに必要な知識・スキルをリストアップし、学習計画を組んだ。しかし実際に新人が配属されて自分の下にくると、相性が合わないためコミュニケーションが困難になり、計画通りに進まない。新人もあまり相談しなくなり、指導関係は形ばかりになってしまった。新人は、何も教育されないまま成長の機会をそがれてしまったのだ。このような場面は、至るところで見受けられる。